2013年12月08日

昨日大学の工学部の先輩のお宅にお邪魔してクリスマスパーティをした際、「風邪を引いた時はビタミンCだ!」という話があった。医学的にはどうなのかと思って調べてみたら、大してきかないけど試してみるのには悪くないのかも、という程度の微妙な結果だった。

Vitamin C for preventing and treating the common cold.

Hemilä H, Chalker E.

 

www.ncbi.nlm.nih.gov

 

以下、抄録のみ私訳

ビタミンCによる風邪の予防と治療
<背景>
ビタミンC(ascorvic acid)による風邪の予防と治療は70年の長きにわたって論争されている問題である。
<目的>
 毎日規則的にサプリメントを飲み続けるか又は風邪症状出現時にサプリメントを飲んだ時に、ビタミンCが風邪の発症率又は罹病期間又は重症度を減らすかどうかを調査する。
<調査手段>
 CENTRAL 2012, Issue 11と MEDLINE (1966年から2012年11月第3週まで)と EMBASE (1990年から2012年11月まで)と CINAHL (201001月から2012年11月まで)と LILACS (2010年01月から2012年11月まで)とWeb of Science (2010年01月から2012年11月まで)の文献群が調査された。
<文献選抜基準>
 ビタミンC使用量が1日200㎎未満の試験および比較する偽薬がない試験は除外された。偽薬対照試験にしぼって文献をレビューした。
<データ収集分析>
 2人の独立した著者がデータを抽出した。当該試験期間中に参加者が1回以上風邪を引いたかどうかで、規則的サプリメント内服者の風邪の「発症率」を評価した。風邪エピソードの続いた日数の平均を「罹病期間」とした。
<主要結果>
 11306名の参加者を含む29の比較試験がメタ分析され、ビタミンCを規則的に使用している場合に試験期間中に風邪を引くリスク比(RR)が解析された。一般地域疫学調査に参加した10708名の参加者においては、pooled リスク比は0.97(95%信頼区間(CI) 0.94-1.00)だった。5つの試験の亜寒帯演習に参加しているマラソンランナー、スキーヤー、兵士の598名のpooled リスク比は0.48(95 % CI 0.35-0.64)だった。31の比較試験が規則的なビタミンC使用の風邪罹病期間(エピソード総数9745)への効果を調査していた。成人では風邪の期間を8%(3-12%)減らし、小児では14%(7-21%)減らした。小児ではビタミンC の1日量が1000mg-2000mgのときに風邪の期間が18%減った。風邪の重症度も規則的なビタミンC摂取によって減少した。7つの比較試験が風邪エピソード3249例に対するビタミンCの治療効果を調査したが、一致した結果はみられなかった。大多数の試験はランダム化二重盲検だった。除外された試験はランダム化されていない試験及び二重盲検化されていない試験だった。
<著者らの結論>
 地域疫学調査においてビタミンCをサプリメントとして定期的に飲んでも風邪の発症率を減らせなかったことから定期的にビタミンCをサプリメントとして摂取することは正当化できないが、激しい運動をしている人たちの風邪発症率を減らせるかもしれない。規則的なビタミンC使用の試験結果からはビタミンCが風邪の罹病期間を短くすることを示したが、これまで施行されたいくつかの治療試験ではこの所見は再現されなかった。とはいえ、規則的なビタミンC使用試験群によって風邪の罹病期間と重症度が改善されることが一致して報告されていることから、ビタミンCは安価かつ安全なので、風邪患者にとってはビタミンCを治療目的で試してみるのは価値があるかもしれない。さらなる治療目的のランダム化比較試験が待たれる。