2013年12月18日

認知症薬のガランタミンについてヤンセンファーマの社員の方にいろいろご質問させて頂ける機会を近日中に頂ける見込みなので、自分自身の予習も含めてお聞きしたいことを整理したいと思います。

(1)アルツハイマー病(AD)治療薬の有効性を証明するためには知能テスト(認知機能)と介護者からの評価(全般臨床症状)の両方で合格する必要があります。いわば車の運転免許取得時に学科検定と実技検定があるのと同じです。学科検定はADASという知能テストで行い、実技検定はいつも側にいる介護者さんにインタビューするCIBICという調査で行います。
ガランタミンは1回目の治験では実技検定(CIBIC)で16mg/日群では合格したのですが24mg/日群はウィルコクソン順位和検定という難しい検定で不合格となり再試験となりました。他に再試験となったAD治療薬はありません。一生懸命不合格の原因が探られ「正常に近いADの方が治験に参加していたのが原因だ」と考察されました。ここで最初のクエスチョンです。ガランタミンは軽度~中等度ADに効くとされていますが、本当は軽度ADの方には積極的に使わないほうがいいのでしょうか?

(2)より厳選された患者様方のご協力のもと再試験は行われたのですが、またしても実技検定(CIBIC)で不合格となりました。前回は16mg/日群では合格だったのですが、今回は16mg/日群も24mg/日群も両方とも不合格です。再び一生懸命不合格の原因が探られ、今度は「介護サービスの利用が影響したのだ」ということになりました。介護サービス有りの集団と無しの集団に分けて解析すると、有りの集団では改善率がプラセボと実薬で変わらないのに無しの集団では改善率が実薬の方が優れていました。やっぱり介護サービスの影響だったんだ、ということになりましたがここで二つ目のクエスチョンです。なぜいきなり「改善率」などという基準が出てきたのでしょうか? 今まではウィルコクソン順位和検定という厳格な検定がなされていたのに? 案の定、ウィルコクソン順位和検定が小さく書かれていますが全然有意差ありませんでした(写真1)。

(3)試験官(PMDA)は問いました。追試が介護サービスの影響でうまくいかなかった可能性があるのは否定しないが、では最初の本試験は介護サービスの影響はどうですか、と。本試験の答案が再調査され、介護サービス有りの集団と無しの集団に分割されました。するとなんということでしょう、介護サービス無しの集団において改善率をみると24mg/日群が16mg/日群を算数的に下回ってしまったのです。用量依存的に結果を出さないといけないのにこれはいけません。しかもあろうことか、介護サービス有の集団では24m/日群が16mg/日群を大きく上回ってしまいました。本試験では介護サービスの影響がかけらもありません(写真2)。ここで三つめのクエスチョンです。こういうデータがあるのに「介護サービスの影響」という仮説をまだ掲げ続けられるのでしょうか?

(4)介護サービスの有無で筆記試験(ADAS)は影響されなかったと主張されていますが、その平均点、標準偏差、p値は何一つ公開されていません。ここで四つ目のクエスチョンです。どういう事情で公開されていないのでしょうか?

(5)今までの経緯に見かねた試験官(PMDA)は「介護サービス以外に試験結果に影響した因子を挙げるように」という救済の手を受験生に差し伸べました(写真3)。受験生はCIBIC評価者の習熟度に問題があるかもしれない、と弁解しました。つまり治験協力医師の質が低い可能性に言及したわけですね。ここで五つ目のクエスチョンです。そのお考えに今も変わりはありませんか? 質の低い可能性があると指摘された当時の治験協力医師の多くは今も老年精神医学の分野に関わり続けているようにも思えるわけですが。

といった内容を近日中にヤンセンファーマさまにお聞きして勉強させて頂きたいと思っております。

 

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