2014年01月10日

一時期J-ADNIに関わった者として本件の背景をご説明します。
 J-ADNIとは軽度認知障害(MCI)という軽い物忘れのある方々の長期経過をみるための臨床研究なのですが、最初に研究参加のボランティアを募る際に、「軽い物忘れ」の度合いを客観的に測定する必要があります。
 その測定基準の一つが「論理的記憶II」という心理検査で、特定の長文を検査者が被験者に読み聞かせたあと、30分後にどれだけ長文の内容を覚えているか採点する、という心理検査です。30分という時間が大事ですので読み聞かせた時刻と思い出してもらう時刻を必ず記録します。
 ところが報道によると一部の被験者は10分後に長文を思い出してもらうよう指示されていたようです。これは検査者の明らかな手続きミスであるので本来ならば当該被験者にお詫びしたうえでJ-ADNI参加をご辞退頂くのが筋です。それなのにデータセンターは「開始時刻(読み聞かせ時刻)の記録を30分に合うように訂正して下さい」と病院側に要請し病院側もそれに応じ当該被験者は何も知らされずにそのままJ-ADNIに参加していた、というのが本件の重大な問題です。10分後と30分後では人の記憶に違いがあるのは明らかなので、これはデータの改ざんそのものです。主な責任者である東大の岩坪先生がどこまで関わっていたのかは必ずしも明らかではありませんが少なくとも管理責任を問われて辞職するのはやむを得ないのではないでしょうか。また、本研究は国の税金と製薬会社の協力金が用いられているので、東大がお金を返還するのも避けられないと思います。
 これだけ重大な事態なのにNHKのニュースによると岩坪先生は「大きな問題ではないと考えている」とおっしゃっておられるそうなので、猪瀬前知事みたいなことにならなければいいのになあ、と感じます。老年精神医学会と認知症学会は早急にコメントを出して本件を非難しておかないと火の粉をかぶってディオバン事件の高血圧学会みたいになってしまうと思います。

NHKニュースweb
アルツハイマー病研究 成果出せない状態に

朝日新聞デジタル
国主導のアルツハイマー病研究で改ざんか 厚労省調査

読売新聞
アルツハイマー研究、データ改ざんの疑い指摘

apital朝日新聞の医療サイト
先端医療激しい競争、成果急いだ可能性 改ざん疑い